後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の審査

後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の
性能認定のための審査の概要

1.目的

 アクセルペダルとブレーキの踏み間違いによる事故が発生しているという報道が多くなされています。実際、様々な交通場面において、運転者によるアクセルペダルとブレーキの踏み間違い(誤操作)が発生しうるものと考えられます。万が一こうした誤操作が生じた場合でも、車の急発進を避けることや速度上昇を抑制できれば、仮に衝突事故を起こした場合でも、歩行者及び運転者、同乗者の事故傷害を極力減らすことになります。また衝突した建物や器物などの損害の軽減にもつながります。
 交通事故の防止や被害軽減の対応策として、危険な状態が近づいた時に車側が自動的に察知し、衝突事故の発生や被害の軽減をはかる予防安全技術が開発・実用化され、多くの車に装備されるようになりました。しかしこうした先進技術のメリットをユーザーが受けるには、予防安全システムが組み込まれた新車に買い替えなければならず、応分の負担となるのが一般的です。
 一方、既に実用に供されている車両(使用過程車)に後付けで取り付ける安全装置も市販されてきました。ただし、後付け方式の場合は、車両側のアクセル、ブレーキ等の制御系と連携させることが構造上も法制度的にも難しいため、後付けの装置は目的や機能が限定されたものが一般的なようです。中でもアクセルとブレーキの踏み間違い操作に限定して、車の動きを安全側に動作させる装置(後付けの急発進等抑制装置)が代表的です。特に高齢ドライバーの増加や急発進事故が多発している現状と、新車への代替化にはそれなりの時間を要する点を考慮すると、後付け装置も社会的には必要であるとの認識が高まっています。
 ただ後付け装置の普及の前提として、ユーザーに安心感をもって使用してもらえなければなりません。そこで後付急発進等抑制装置の基本性能を公正・中立の立場から認定することが必要との国の方針が示されました。これを受けて、同装置の性能認定のための審査試験を、公益財団法人 日本自動車輸送技術協会(JATA)が実施することになりました。

2.関連資料

 本件に関わる関連資料は、下記のボタンをクリックすることで閲覧及びダウンロードができます。

3.装置の性能認定に係る審査の適用範囲

 後付踏み間違い急発進等抑制装置の性能認定のための審査等については、「後付安全運転支援装置の性能の評価等に関する規程」(令和2年国土交通省告示第478号)、「後付安全運転支援装置の性能認定実施要領」(令和2年国土交通省告示第479号)及び「後付安全運転支援装置の性能認定実施要領細則について」(国自技第276号、令和2年3月31日)別添「後付安全運転支援装置の性能認定実施要領細則」によるほか、上記に掲載した「審査実施要領」に従って実施することとします。

4.対象となる装置

  • (1)装置の分類
      後付踏み間違い急発進等抑制装置は、以下の①又は②のいずれか又はその組み合わせとなります。
    • (a)後付障害物検知機能付ペダル踏み間違い急発進抑制装置
      発進時等(ごく低速での走行時を含む)のペダル踏み間違い(運転者がブレーキペダルを踏んだつもりで誤ってアクセルペダルを踏んだつもりで誤ってアクセルペダルをを踏み続けてしまうこと)に際して、周辺の障害物を検知して衝突の可能性がある場合には、衝突の防止または被害軽減のために急発進及び急加速を抑制する後付装置です。
    • (b)後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置
      発進時等にペダル踏み間違いをした場合に、急発進、急加速してしまうことを抑制する後付装置です。
  • (2)対象となる装置の基本要件
      対象の装置は、以下の基本要件を備える必要があります。
    • ①車両の前進・後進のいずれにおいても、発進時等に装置が作動すること
    • ②当該装置の作動状況を運転者に分かりやすく示すための表示機等を備えていること
    • ③装置に異常が発生したときに、その旨を運転者に分かりやすく示す表示機等を備えていること
    • ④運転者が装置の機能を停止するスイッチ等を備えていること
    • ⑤当該装置の使用または使用時の故障により、急発進、急加速、急制動等の予期しない車両挙動又は車両本来の機能の低下を招くおそれがないこと。
  • (3)装置の作動要件
    • ①後付障害物検知機能付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の場合
      衝突可能性がある周辺障害物を検知している時にペダル踏み間違いが発生した場合には、加速を抑制するとともに、運転者にそのことを警報すること
    • ②後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の場合
      加速を抑制する範囲は、通常走行時におけるアクセルペダルの踏み込み等を勘案し、運転者が予期しない加速抑制を可能な限り排除するよう設定されていること

5.後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置認定に係る主な業務の流れ

 おおむね下の図に示す流れになります。詳細については、JATAの調査部(下記)にお問合せください。

後付け安全運転支援装置の性能認定に係る業務の流れ

後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の
性能認定のための審査の方法

審査の申請者

 審査の申請が行えるのは、後付踏み間違い急発進等抑制装置の製造者あるいは製造者との契約に基づいて当該装置の販売を行う者であって、製造者から審査に必要な情報の提供を受けることができる事業者になります。

後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の審査実施に伴う試験方法

 衝突対象物が車両の前方及び後方1mの位置にあるという条件を設定して、ドライバーによる誤操作を模擬した急発進後の対象物への衝突速度をシャシダイナモメータ試験によって測定します。その際には、後付装置が機能している時と同装置の機能を停止させた時の対象物への衝突速度を比較し、その差の割合を算出することにより、後付装置による衝突速度の抑制効果を定量的に確認します。

(1)後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の場合の試験方法

 衝突対象物が車両の前方または後方1mの位置にあるものとして、急発進操作後の衝突速度の違いをシャシダイナモメータ上で求めることにより、装置の急発進抑制効果を確認する台上試験です。

(2)後付障害物検知機能付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の場合の試験方法

 「ペダル踏み間違い時加速抑制装置性能試験方法」(独立行政法人自動車事故対策機構、平成30年3月20日制定)の試験方法を準用して実施することとします。
 試験は、乾燥状態における摩擦係数が0.9 程度のアスファルト路面の試験路上で行います。

(3)試験成績の記録

 後付け装置の機能の作動(ON)時と非作動(OFF)時の前進時(F)と後退(R)時の衝突速度(VON、VOFF)の変化率を下記の式によって求め、少数第2位を四捨五入して少数第 1 位まで求めた数値をそれぞれ記録します。
 なお、この場合の 前進時(FON、FOFF)と後退時(RON、ROFF) については、仮想衝突速度の中央値を使用するものとし、また FONとRONの試験に際して、仮想衝突位置に到達しなくてFOFF又はROFFの試験測定が省略された場合には、速度変化率の評価値は「1.0」とすることにします。

 後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の加速抑制機能としては、前後とも衝突速度の変化率が0.3以上になることが求められています。

後付ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定のための審査に関するお問い合わせの窓口は、以下となっております。
(公財)日本自動車輸送技術協会(JATA)本部  調査部
〒160-0004 東京都新宿区四谷三丁目2番5 全日本トラック総合会館8階
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FAX 03-6836-1555
メール chousa@ataj.or.jp

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